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スペシャルライブ 「Ai Furihata “Trip to ORIGIN”」 ソロアーティストとしての初公演をレポート!

誰にも“初めて”の時は訪れる。初めての誰かと言葉を交わす時、初めて誰かに歌いかける時……そこにあるのはワクワクと緊張が混じり合った、新しい感動だ。2020年11月14日(土)、Billboard Live YOKOHAMA。降幡 愛がソロアーティストとして、自分自身の歌を歌う “初めて”のワンマンライブ『降幡 愛スペシャルライブ「Ai Furihata “Trip to ORIGIN”」』は、そんな“初めての感動”に包まれていた。

会場となったBillboard Live YOKOHAMAは、2020年7月にオープンした、トップクラスのアーティストのパフォーマンスを食事と共に堪能できるライブレストラン。この日もそんな極上の空間に合わせ、客席はちょっぴりかしこまったスマートカジュアルないでたちのファンで埋められていた。それぞれが、事前にドレスコードとしてアナウンスされていた“青色”のアイテムを身につけているのも楽しい。テーブルには、会場限定オリジナルドリンク「プールサイドカクテル」や「CITY curry」が並び、誰もが今か今かと降幡の登場を静かに待っている。

しっとりとしたジャズのスタンダードナンバーがBGMとして流れる中、きらびやかな会場の灯りがスッと消えると、「CITY」のMVでも演奏を披露していたレジェンドなバンドメンバー――江口信夫(Ds)、根岸孝旨(Ba)、町田昌弘(Gt)、nishi-ken(Key)、会原実希(Cho)が、客席を通って登場。16時半、青色のライトが包むステージに、美しいシンセサイザーのアルペジオが響き、バンドが生音を合わせていく。大きな拍手が手拍子に変わり、降幡 愛が颯爽とステージへ。中央のマイクスタンド前で深くお辞儀をして、客席の手拍子を煽る。記念すべき初めてのワンマン、1stステージのスタートだ。

1曲目は、リズミカルなサウンドにのせた「プールサイドカクテル」。今回のライブは1st・2ndそれぞれの公演でイメージの異なる衣装が披露されたのも、ファンには嬉しいポイントだった。初日1stステージの衣装は、ドレスコードのカラーに合わせた上品なブルーのパンツスーツ。両手にはめたパープルピンクの手袋が、降幡がクールな振りを決めるたび、ライトをキラリと反射する。「CITY」のMVでも見せていたアダルトに醸し出された雰囲気に、降幡のソロアーティストとしてのデビューを実感させられる。

「プールサイドカクテル」を歌い終えると、車のエンジン音が鳴り響き、アップテンポのキラキラしたイントロが流れる中、いつも通りの元気な声で「最後まで楽しんでくださいねー!」と叫び、高く手を振る降幡。続いて歌われたのは、彼女のアーティストコンセプトを鮮やかに印象づけた「CITY」だ。80‘sシティポップらしい軽快なバンドサウンドにのせて、ストレートで芯のある魅力的なハイトーンが、CD以上にビビッドに迫ってくるのもライブならでは。MVでも皆を驚かせた、スマイルを封印した大人っぽい表情にもドキリとさせられる。

今日この日を迎えられた喜びを語り、「観ての通り、めちゃくちゃ緊張してるんですよ!」と言いながら、声を出さない約束で手を振って応援する客席に、ホッとした表情で笑いかける降幡。クールな歌声から一転、おなじみのキュートなボイスで語られるMCとのギャップも楽しい。そしてハイチェアに腰かけて歌われた3曲目は、ピンクの照明を浴びて伸びやかなボーカルからの始まりが印象的な「シンデレラタイム」。降幡は跳ねるリズムを待ちきれないように、イスに座りながらも足を振り上げ、拳を振って熱を帯びた姿を見せる。

「9月23日のミニアルバムでのデビューから、あっという間だったな」と言って、今日のライブでのオリジナルドリンクやカレー、ドレスコードについて紹介する降幡は、「私もブルーのお衣装で……いかがですか? いつもは出さないお腹も出してみました。元気だよ!」と笑いを誘う。衣装にも演出にも凝った今回のライブだが、降幡が使用したマイクケーブルも実は自前。「アコリバ(ACOUSTIC REVIVE)さんのすんばらしいケーブルを持参しました。何から何まですごいんですけど、ミュージシャンの方々がすごいんですよ! レジェンドの皆さんと一緒に初めてのステージに立てることが……嬉しいですね」と感慨深げだ。80‘sシティポップをコンセプトにしたソロデビューについても、「私の“楽しい”が、皆さんに伝わっていると思うから、どんどん皆さんを巻き込んでいきたい。今まで応援してくれていた方達は戸惑ったと思いますけど、皆さん、受け入れてくれて、着いてきてくれて、本当に嬉しいです。ありがとうございます!」と、改めてファンへの感謝の気持ちを伝えた。

そしてここからは、事前にSNSで募集した“降幡 愛にカバーして欲しい曲”リクエストに応えて、ライブならではの選曲を届ける。1曲は一番リクエストが多く、降幡自身も一番歌いたかったという竹内まりやの「Plastic Love」。もう1曲は、降幡が大好きな往年の名作アニメ『気まぐれオレンジ☆ロード』のエンディングテーマだった、中原めいこの「Dance In The Memories」だ。大人っぽい優しさと、キュートさとアダルトさが混じった疾走感ある歌声。カバー曲だからこその降幡の新しい魅力を、またひとつ見せてくれた。

「続いての曲は、皆さんと一緒に踊ったりしたいな」と語って本人が振り付け指導を行い、元気にタイトルをコールして歌われたのは、懐かしのロカビリー風歌謡曲テイストと、弾けるスカのリズムが融合した「Yの悲劇」。降幡が放つ強烈な“YADA・YADA”の声に合わせて、客席の全員が両手で作った×マークで応える。そしてセットリストはそのまま、「ラブソングをかけて」へと進む。ミステリアスな歌詞を彩る、明るくトロピカルなラテンサウンドとキュートな降幡の歌声が、Billboard Live YOKOHAMAに爽やかな風を運んでくれた。

バラエティに富んだ楽曲を届けてきた初めてのワンマンも、既に終盤。「ひとりでアーティストとしてデビューして、ひとりで立つステージを今日迎えて、不安でいっぱいでした。皆さん1人1人の顔を見て……一生懸命、真面目に全力で皆さんに届けるんだと練習してきたから、今日を迎えられて本当に良かった。皆さんがいるから、私はこうしてステージに立てます」と、想いを込めて語る降幡。ファンと顔を合わせてライブが出来たことの喜びを込めた「ありがと!」の声が、感極まってかすかに震える。「ちょっと泣きそう!……これから皆さんが胸を張って、降幡 愛というアーティストが好きだと言ってもらえるように、頑張るね!」。

懸命に涙を堪えながら、本編ラストを飾ったのは切ないバラード「OUT OF BLUE」。時折、ほんの少し声を詰まらせながらも熱唱する降幡を、江口信夫のタイトなドラム、nishi-kenの美しいシンセ、町田昌弘の伸びやかな泣けるギターと根岸孝旨のタフなベース、会原実希の豊かなコーラスが温かく支えた。

そして、大きな拍手と手拍子が自然発生したアンコールでは、降幡からの嬉しいプレゼントも。12月23日に早くもリリースが決定した2ndミニアルバム『メイクアップ』から、リードトラックの「パープルアイシャドウ」が初披露された。プロデューサー・本間昭光だからこその、根岸のスラップがパンチを効かせたゴージャスなサウンドとキャッチーなメロディーが、降幡の真っ直ぐな歌声を際立たせ、歌詞に込められた切ない気持ちを浮かび上がらせる。

「いかがでした? めちゃくちゃベースがカッコいいやつ(笑)。先日MVも初公開されましたが、観ていただけましたか? もう2ndミニアルバムの話をしてるんです、早いな~!(笑) すべてまた作詞しました! 期待以上のミニアルバムになっていますので、皆さんよろしくお願いします!」

1stステージが終わってしまうのを名残惜しみながら、降幡は元気いっぱいにバンドメンバーを紹介する。一人ずつの名前をコールし、「ボーカルは私、降幡 愛でした!!」とシャウトして、本当のラストナンバー「CITY」を再び熱唱。ハンドマイクに持ち替えてステージの上手と下手を行き来しながら、オーディエンス1人1人に何度も手を振り、時に大きなアクションを交えながら、噛みしめるような表情で懸命に歌を届ける。サビで繰り返される“二人だけの夜を離したくはない”のフレーズはそのまま、今日このステージを見守ってくれたファンに向けてのメッセージのようだった。心温まるアンコールのラスト、マイクを外して「本日はどうもありがとうございました!」と深々と礼をし、ステージ端からキュートな投げKISSを飛ばした降幡に、客席から惜しみない拍手が贈られた。

翌11月15日の2ndステージでは、2021年 2月18日の降幡の誕生日前日と19日の当日に、Billboard Live TOKYOにてバースデーライブを開催することを発表(2nd ミニアルバム『メイクアップ』にチケット最速先行抽選申込券を封入)。さらに4月には横浜・名古屋・大阪・東京にてZeppツアーが行われることも降幡本人から語られた。デビューミニアルバム『Moonrise』全曲をたっぷりと生で届け、2ndミニアルバム『メイクアップ』への期待もさらに高まった「Ai Furihata “Trip to ORIGIN”」。次なるステージでは、さらに成長した歌とパフォーマンスを観せてくれるに違いない。

Text by 阿部美香